JPEG(ジェイペグ)は、静止画像の圧縮形式の1つです。
正式名称は「Joint Photographic Experts Group」で、一般的には「ジェイペグ」と呼ばれます。
写真などの自然画像の記録に向いており、高画質で保存できる一方で、ファイルサイズを小さくすることができます。
JPEGの歴史
1980年代:JPEG誕生の背景
1980年代後半、デジタル画像技術の進歩に伴い、画像の保存や伝送におけるデータ量が飛躍的に増加していました。当時主流だった画像フォーマットであるBMP形式は、高画質を維持できる一方で、ファイルサイズが非常に大きく、保存や伝送に課題がありました。
この課題を解決するため、より効率的な画像圧縮技術の開発が求められました。
1991年:JPEG規格の策定
1991年、国際標準化機構(ISO)と国際電気通信連合(ITU)によって、静止画像圧縮標準「JPEG」が策定されました。
1990年代:JPEGの普及
JPEG規格の策定後、その高画質と圧縮率の高さから、JPEGは急速に普及しました。
デジタルカメラや画像編集ソフト、Webブラウザなど、幅広いソフトウェアやハードウェアでJPEGがサポートされるようになり、写真や画像の保存、伝送、配信における標準的なフォーマットとなりました。
2000年代以降:JPEGの進化
2000年代以降も、JPEGは改良が続けられています。
- JPEG 2000: 2000年に策定された拡張規格。従来のJPEGよりも高画質化と圧縮率向上が実現されています。
- JPEG XR: 2009年に策定された拡張規格。マイクロソフトが開発したもので、JPEG 2000よりも高い圧縮率と、可逆圧縮機能が搭載されています。
- JPEG LS: 2013年に策定された拡張規格。ローソリューション画像向けの圧縮規格で、従来のJPEGよりも高い圧縮率と、画質の維持を実現しています。
JPEGの特徴
- 非可逆圧縮: 圧縮時に画像の一部情報が失われるため、元の画像と完全に一致しませんが、人間の目では違いが分からない程度に抑えられます。
- 高画質: 1677万色のフルカラー画像を扱え、繊細なグラデーションや自然色を再現できます。
- 圧縮率が高い: 画像の容量を小さくできるため、Webサイトやメールでの画像配信などに適しています。
- 汎用性が高い: インターネット上で広く利用されており、多くの画像編集ソフトで扱えます。
- 拡張子は.jpgと.jpegの2種類がある: 機能的には違いはありませんが、.jpgの方が一般的です。
JPEGのメリット・デメリット
メリット
- 高画質で保存できる
- 圧縮率が高い
- インターネット上で広く利用されている
- 多くの画像編集ソフトで扱える
デメリット
- 非可逆圧縮のため、元の画像と完全に一致しない
- イラストやロゴなどの色のはっきりとした画像には向いていない
JPEG圧縮の仕組み
JPEGは、人間の視覚特性に基づいた離散コサイン変換(DCT)と量子化という技術を組み合わせた圧縮方式を採用しています。
DCTは、画像を周波数成分に分解し、人間の目に対して感度が低い高い周波数成分を破棄する技術です。量子化は、残された周波数成分の精度を下げることで、さらに圧縮率を高める技術です。
これらの技術により、JPEGはBMP形式と比べて約50分の1のファイルサイズで、ほぼ同等の画質を維持することができます。
詳細*1
JPEGとその他の画像形式との比較
まとめ
JPEGは、写真などの自然画像を保存するのに適したファイル形式です。一方、イラストやロゴ、アニメーションにはPNGやGIFの方が適しています。
用途や目的に応じて、適切な形式を選択することが重要です。
参考情報
その他
このブログ記事が、JPEGと他の画像形式の違いを理解するのに役立てば幸いです。
何か質問があれば、遠慮なくコメントしてください。
*1:
1. 色空間変換
まず、画像の色空間をRGB(赤、緑、青)からYCbCr(輝度、色差(青-赤)、色差(黄-青))に変換します。
人間の目は、輝度変化に対して感度が高く、色差変化に対しては感度が低いという特性があります。YCbCr空間では、この特性を活かして、輝度成分を独立して扱い、色差成分を間引くことができます。
2. 離散コサイン変換(DCT)
次に、画像を8×8個のブロックに分割し、それぞれのブロックに対して離散コサイン変換(DCT)を行います。
DCTは、空間領域のデータを周波数領域に変換する数学的な変換です。変換後、低周波数成分は低周波数成分のブロックに、高周波数成分は高周波数成分のブロックに集約されます。
人間の目は、低周波数成分に対して感度が高く、高周波数成分に対しては感度が低いという特性があります。
3. 量子化
DCTで得られた周波数成分に対して、量子化と呼ばれる処理を行います。量子化は、各周波数成分の精度を下げることで、圧縮率を高める技術です。
量子化の程度は、各周波数成分に対する人間の視覚感度に基づいて決定されます。人間の目に対して感度が低い高周波数成分は、より精度を下げることができます。
4. エンコーディング
量子化された周波数成分を、エンコーディングと呼ばれる処理で符号化します。
エンコーディングには、ハフマン符号化やランレングス符号化などの手法が用いられます。これらの手法は、出現頻度の高いデータをより短いビット数で符号化することで、圧縮率を高めることができます。
5. ファイル保存
エンコーディングされたデータと、使用されたエンコーディング方式に関する情報などをまとめて、JPEGファイルとして保存します。
*2:
PDF(Portable Document Format)
- 特徴: テキスト、画像、レイアウト情報などをまとめて保存できるフォーマットです。
- メリット:
- ファイルフォーマットが異なる環境でも、元のレイアウトを維持できる
- セキュリティ機能が充実している
- 検索機能が利用できる
- デメリット:
- ファイルサイズが大きくなる
- 編集が難しい
- 用途:
- 文書の印刷や配布
- 電子書籍
- パンフレット
- マニュアル
*3:
PNG(Portable Network Graphics)
- 特徴: 可逆圧縮方式の画像フォーマットで、イラストやロゴ、Webアイコンなどに適しています。
- メリット:
- 画像情報が劣化せずに保存できる
- 透明色を扱える
- インターネット上で広く利用されている
- デメリット:
- ファイルサイズが大きくなる
- 写真などの自然画像には向いていない
- 用途:
- イラストやロゴの保存
- Webアイコン
- バナー広告
- スクリーンショット
*4:
PSD(Photoshop Document)
- 特徴: レイヤー情報などを保存できるフォーマットで、画像編集に適しています。
- メリット:
- レイヤー編集が可能
- さまざまな効果やフィルターを適用できる
- 高解像度の画像を扱える
- デメリット:
- ファイルサイズが非常に大きくなる
- Photoshopなどの専用ソフトが必要
- 用途:
- 写真編集
- イラスト制作
- Webデザイン
- 広告制作
*5:
GIF(Graphics Interchange Format)
- 特徴: アニメーション画像を扱えるフォーマットです。
- メリット:
- ファイルサイズが小さい
- シンプルなアニメーションを作成できる
- インターネット上で広く利用されている
- デメリット:
- 256色以下の限られた色数しか使用できない
- 画質が劣化する
- 写真などの自然画像には向いていない
- 用途:
- Webサイトのバナー
- ローディングアイコン
- アニメーションGIF
- シンプルなロゴ
*6: